CBT化で資格試験はどう変わった?受験者数の増減をデータで検証

CBT・ネット試験化で資格試験の受験者は増えたのか。基本情報、アクチュアリー、販売士、日商簿記などの公式データを比較し、通年化の影響やCBTのデメリット、資格統計の読み方まで検証します。

資格試験といえば、以前は「年に1回、この日のために勉強する」というものが珍しくありませんでした。

決められた日に、決められた会場へ行く。

その日を逃したら、次に受けられるのは半年後。試験によっては1年後。

勉強が間に合っていようが、仕事が忙しかろうが、試験日は待ってくれません。

でも、そんな資格試験の形がかなり変わってきています。

テストセンターへ行き、パソコンで受験するCBT。

資格によっては自宅から受けられるIBT。

さらに、年に2回、3回だった試験が通年化され、自分で受験日を選べるものまで増えてきました。

ここで、ちょっと気になります。

こんなに受けやすくなったら、受験者も増えるんじゃないか?

なんとなく、そんな気がします。

そこで今回は、実際にCBTやネット試験へ移行した資格について、移行前後の受験者数を追ってみました。

すると――。

思っていた以上に、結果はバラバラでした。


CBT化は「紙がパソコンになっただけ」ではない

まず整理しておきたいのが、ひとくちに「CBT化」といっても、中身はかなり違うことです。

CBTは、テストセンターなどに設置されたパソコンを使って受験する方式。

一方、IBTは自宅や会社などからインターネット経由で受験する方式です。

そして今回かなり重要だったのが、

「パソコンで受けるようになったこと」と「受験機会が増えたこと」は別

という点でした。

たとえばアクチュアリー資格試験は、2022年度から紙試験をCBTへ移行しました。

でも試験は今も年1回です。

一方、基本情報技術者試験はCBT化したうえで、2023年度から年間を通じて受験できるようになりました。

日商簿記2級・3級はさらに違います。

従来の統一試験をなくさず、ネット試験という新しい受験経路を追加しました。

つまり、

「CBT化した資格」を全部同じ箱に入れてはいけない。

ここを分けて見ないと、受験者数が増えた理由までCBTの効果に見えてしまいます。


CBTは便利。でも、パソコンならではのリスクもある

CBTには、日時や会場を選びやすいという大きなメリットがあります。

一方で、紙試験にはなかった「機器やシステムのトラブル」というリスクもあります。

実際、日本アクチュアリー会の2025年度資格試験「生保1」では、特定会場で44人が試験を続行できなくなるトラブルが発生しました。希望者には後日、再試験が行われています。

もちろん、この一例だけでCBTそのものを否定することはできません。

ただ、

「紙からパソコンになる=全部便利になる」ほど単純でもない。

ここは覚えておきたいところです。


資格試験のコンピューター化は、ここまで広がった

資格試験のCBT・ネット試験化の年表

年表にしてみると、これが思った以上に広がっています。

ITパスポートは2011年にCBT・随時試験へ移行。

統計検定2級・3級では2016年からCBTが導入されました。

そして2020年代に入ると、一気に増えます。

日商簿記。

基本情報技術者。

販売士。

DCプランナー。

アクチュアリー。

FP技能検定。

そして2026年には、司法試験にもCBTが導入されました。

2026年9月27日には証券アナリストCMA第1次試験でもCBTが始まる予定です。

応用情報技術者試験、高度情報処理技術者試験、情報処理安全確保支援士試験も2026年度からCBTへ移行します。

さらに2027年度からは、第一種・第二種電気工事士の学科試験も原則CBTになります。

ここまで来ると、もう「IT系の試験で使われる方式」という感じではありません。

司法、金融、会計、技能系。

資格試験そのものが、かなり大きな転換期に入っているように見えます。


じゃあ、CBT化した資格の受験者は増えたのか?

ここからが本題です。

今回は、CBTやネット試験へ移行した資格のうち、比較可能なデータがそろった5資格について、

コロナ禍前の2019年・2019年度=100

として、2025年・2025年度の受験規模を比較しました。

2019年を選んだのは、5資格すべてが現在の試験方式へ移る前で、なおかつ新型コロナによる試験中止や延期などの影響が本格化する前だからです。

CBT・ネット試験化した資格の2019年から2025年の規模変化

結果は、

  • 基本情報技術者:121.1
  • DCプランナー2級:108.8
  • アクチュアリー第1次:77.0
  • 販売士3級:50.2
  • 福祉住環境コーディネーター3級:48.6

となりました。

……いや、かなりバラバラです。

CBT化したら受験者が増える。

そんな単純な話なら分かりやすかったのですが、実際の数字はまったくそうなっていません。

2割以上増えた資格もある。

ほぼ変わらない資格もある。

2割以上減った資格もあれば、半分程度になった資格まであります。

もちろん、このグラフだけを見て、

「CBTのおかげで増えた」

「CBTのせいで減った」

とは言えません。

資格そのものへの需要も違えば、制度変更の内容も違います。

2025年時点で、主要資格全体の受験規模がどれくらいなのかは、主要資格・検定の受験者数ランキングTOP15でも比較しています。

むしろここからが面白いところです。

一つずつ見ていくと、同じ「CBT化」でも、かなり違うことが起きています。


基本情報技術者――通年化後に、紙試験時代を超えた

最も増えていたのが基本情報技術者試験です。

2019年度の受験者数は121,556人でした。

その後、CBTへの移行期とコロナ禍を挟み、2021年度は85,428人、2022年度は101,620人。

そして2023年度。

基本情報技術者試験は年間を通じて随時受験できる方式へ変わり、受験者数は121,611人になりました。

2019年度が121,556人なので、

ほぼぴったり元の水準です。

そこから2024年度は133,732人。

2025年度には147,186人まで増えました。

基本情報は2024年度から2025年度にかけても増えており、直近1年間の動きは受験者が増えた資格・減った資格ランキングでも比較しています。

ここ、最初に数字を見たときは「CBT化でかなり増えたな」と思いました。

でも2019年度まで戻ってみると、少し印象が変わります。

CBTにした瞬間に急増したわけではありません。

紙試験時代の規模まで戻ったのは、通年化した2023年度。

そして、その後に2019年度を超えていきました。

もちろん、これだけで「通年化したから増えた」と断定はできません。

IT人材需要の変化もある。

試験制度自体も変わっています。

それでも、

「パソコンで受けられる」だけなのか。
「自分のタイミングで受けられる」のか。

この差は、かなり大きいのかもしれません。


アクチュアリー――CBTになった。でも年1回は変わらない

この違いを考えるとき、アクチュアリー資格試験がかなり面白いです。

アクチュアリー試験は2022年度から、紙試験からCBTへ移行しました。

ただし、基本情報とは違います。

年1回という試験回数はそのままです。

言ってしまえば、

「試験日は大きく変えず、解答する道具が紙からパソコンへ変わった」

というタイプにかなり近い。

第1次試験の総受験科目数を見ると、

  • 2019年度:3,714科目
  • 2020年度:3,591科目
  • 2021年度:3,365科目
  • 2022年度:2,704科目
  • 2023年度:2,710科目
  • 2024年度:2,841科目
  • 2025年度:2,860科目

となっています。

ここも注意が必要です。

CBT化した2022年度に数字が落ちているので、一瞬、

「CBTにしたら減った?」

と思ってしまいます。

でも、その読み方はできません。

CBTになる前から、すでに減っているからです。

移行初年度を底に、その後はむしろ少しずつ戻しています。

一方で、CBTへ変わったことで一気に受験規模が拡大したわけでもありません。

基本情報と並べると、

CBT化そのものと、受験機会を増やすことはやっぱり別なんだな

と感じます。


受けやすくなっても、減少は止まらなかった

さらに印象的なのが、販売士3級と福祉住環境コーディネーター3級です。

販売士3級は2021年度から、従来の統一試験から随時受験できるネット試験へ移行しました。

2019年度の実受験者数は15,659人。

2025年度は7,861人です。

ほぼ半分です。

「受けやすくなったのに、こんなに減るのか」

と、数字だけ見るとかなり意外です。

ただし、ここでも時系列を少し戻す必要があります。

販売士3級は、

  • 2017年度:19,820人
  • 2018年度:17,662人
  • 2019年度:15,659人

と、ネット試験になる前からすでに減少していました。

なので、

ネット試験化したから減った

ではありません。

むしろ、

受験しやすい方式へ変わっても、それ以前から続いていた減少傾向を反転させるまでには至らなかった

と見る方が自然です。

福祉住環境コーディネーター3級も似ています。

2019年度の実受験者数は9,525人。

現在はIBT・CBT方式で、試験期間の中から都合の良い日時を選べます。

それでも2025年度の実受験者数は4,632人。

こちらも2019年度の半分程度です。

これを見ていると、

「受けやすい」と「受けたい」は、やっぱり別なんだな

と思わされます。

試験日が自由になれば、受験を諦める理由の一つは減るでしょう。

でも、それだけで資格そのものへの需要が生まれるわけではありません。

業界での位置付け。

資格の知名度。

企業からの評価。

受験者層の変化。

ほかの資格との競合。

試験の外側にあるものの方が、受験者数には大きく効いている場合もありそうです。


CBT化しても、特に大きく変わらない資格もある

増えた。

減った。

だけではありません。

DCプランナー2級は、この間に入ります。

2019年の実受験者数は2,279人。

2021年9月からCBTによる通年試験へ移行しました。

その後は、

  • 2021年度:2,339人
  • 2022年度:2,586人
  • 2023年度:2,338人
  • 2024年度:2,174人
  • 2025年度:2,480人

と推移しています。

増えたり、減ったり。

でも大きく見れば、だいたい2,000人台です。

2019年と2025年度を比較すると約9%増ですが、

「CBT化したら右肩上がりになった」

という感じでもありません。

こういう例もあるんですよね。

これが結構大事だと思います。

増えた基本情報。

減った販売士。

この2つだけを出すと、どうしても劇的な話に見えてしまいます。

でも実際には、

試験方式を変えても、受験規模はそこまで変わらない資格もある。

現実は、たぶんこっちの方が普通なのかもしれません。


日商簿記では、受験者が紙からネットへ移ったと考えられる

そして、今回いちばん「CBT化すると数字の見方まで変わるんだな」と感じたのが日商簿記3級でした。

日商簿記2級・3級では、2020年12月からネット試験が始まりました。

ただし、従来の統一試験は残っています。

2021年度以降は、

  • 統一試験
  • 団体試験(ペーパー)
  • ネット試験

という複数の受験経路が存在します。

では、統一試験とネット試験の数字を並べるとどうなるのか。

日商簿記3級の統一試験とネット試験の受験者数推移

2021年度から2025年度までに、

統一試験の実受験者数は、

142,626人 → 52,723人

まで減りました。

一方、ネット試験は、

206,149人 → 276,477人

まで増えています。

動きが完全に逆です。

しかも、公開されているこの2方式だけで見ると、2025年度はネット試験が約84%を占めます。

これを見る限り、

日商簿記3級では、受験者のかなりの部分が紙の統一試験からネット試験へ移ったと考えられます。

これ、統一試験の数字だけ見ていたら危ないです。

統一試験は約14万人から約5万人。

それだけ見れば、

「簿記3級を受ける人、ものすごく減ったな……」

となります。

でもネット試験を見ると、むしろ増えています。

つまり減ったのは、

「簿記を受ける人」ではなく、「決められた日に統一試験で受ける人」だった部分がかなりある。

試験方式を変えると、人が資格試験を受ける行動そのものまで変わる。

これは今回調べた中でも、かなり分かりやすい例でした。

会計・金融資格全体の受験規模は、主要会計・金融資格の受験者数ランキングTOP15でも比較しています。


CBT化は「資格統計の読み方」まで変えた

日商簿記の数字を見ていて、もう一つ気づいたことがあります。

昔の資格試験なら、

「年2回の受験者数を足す」

「年3回の実受験者数を足す」

だけで、年間の受験規模をかなり把握できました。

ところがCBTやネット試験が入ると、話がややこしくなります。

紙試験とCBTが併存している。

団体試験が別にある。

同じ人が年内に何度も受けられる。

試験によってはCBTとIBTまで混在する。

こうなると、

「年間受験者数」という数字そのものの意味を確認しないといけません。

実人数なのか。

延べ受験件数なのか。

紙試験だけなのか。

CBTも含むのか。

日商簿記3級でも、統一試験とネット試験を足しただけでは資格全体の完全な受験者数にはなりません。

別に団体試験が存在するからです。

昔の数字と今の数字を同じ感覚で並べると、普通に読み違えます。

CBT化は、

資格試験の受け方だけではなく、資格統計の読み方まで変えた。

資格の数字を追っている立場からすると、これはかなり大きな変化です。


じゃあ、CBTは受験者を増やすのか

ここまで見てくると、最初の問いに戻りたくなります。

CBT化すると、本当に受験者は増えるのか?

今回の5資格だけでも、

増えた。

ほぼ変わらない。

減った。

全部ありました。

なので、答えは少なくとも、

「CBTにすれば受験者が増える」とは言えない

になります。

ただ、今回の数字を見ていて、もう一つ感じたことがあります。

CBTは、

資格への需要を生み出す仕組みというより、すでに受けたいと思っている人が受験するときの“摩擦”を減らす仕組み

と考える方が、しっくりくるのかもしれません。

仕事と試験日が重なった。

勉強があと1か月間に合わなかった。

近くに試験会場がなかった。

次の試験まで半年待たないといけない。

こうした理由で受験を諦める人は、通年CBTなら減らせます。

一方、

「そもそもこの資格を取りたいと思う人が減っている」

のであれば、試験日を自由にしただけで状況を全部ひっくり返すのは難しい。

販売士や福祉住環境の数字を見ると、そんなことを考えさせられます。

逆に基本情報のように、資格そのものへの需要があり、そこへ通年化による受けやすさが加われば、受験者数が伸びる可能性もあります。

もちろん、今回の比較だけでそこまでの因果関係を証明できるわけではありません。

でも少なくとも、

「紙をパソコンにしたか」だけを見るのでは足りない。

ということは、かなりはっきり見えてきました。


CBT化は、まだ進行中

そして、この話は過去の制度変更を振り返って終わりではありません。

2026年には司法試験でCBTが導入されました。

2026年9月27日の証券アナリストCMA第1次秋試験からは、CBTとPBTの併用が始まる予定です。

応用情報技術者試験、高度情報処理技術者試験、情報処理安全確保支援士試験も2026年度からCBTへ移行します。

日本語教育能力検定試験も2026年12月からCBT・通年実施へ。

そして2027年度には、第一種・第二種電気工事士の学科試験が原則CBTになります。

少し前まで、

「資格試験は決められた日に、大きな会場へ集まって、紙で受ける」

という光景は当たり前でした。

司法試験までCBTになった今、その「当たり前」がかなり揺らいでいます。


結局、CBT化で資格試験はどう変わった?

今回、実際の受験者数まで追ってみて、一番印象に残ったのは、

CBT化した資格の受験者数は、本当にバラバラだった

ということでした。

基本情報技術者のように2019年度の規模を超えた資格もある。

販売士や福祉住環境コーディネーターのように、受けやすくなっても以前からの減少傾向が続いた資格もある。

アクチュアリーのように、CBTになっても年1回という資格もある。

DCプランナーのように、大きくは変わらなかった資格もある。

そして日商簿記のように、受験者数そのものより受験経路の構成が大きく変わった資格もあります。

だから、

CBT化=受験者増

ではありませんでした。

でも、

何も変わらない

わけでもありません。

いつ受けられるのか。

何回受けられるのか。

どこで受けられるのか。

どれくらい先まで待たなければならないのか。

そうした「資格試験を受けるまでの面倒」は、確実に変わってきています。

そして、その変化が受験者数にどう表れるかは、資格そのものへの需要と組み合わさって決まる。

今回の数字を見る限り、そんな見方が一番自然に思えます。

資格試験は、難易度や出題内容だけではなく、

「いつ、どこで、どう受けるものなのか」まで変わり始めています。


集計・比較上の注意

今回の比較では、各試験実施団体が公表している受験者数・実受験者数等を使用しています。

2019年と2025年の比較については、各団体の公表単位に合わせて2019年または2019年度、2025年または2025年度を使用しました。

アクチュアリー第1次試験のみ、1人が複数科目を受験できるため、実受験者数ではなく「総受験科目数」で比較しています。他資格との人数の大小を比べるものではなく、同資格内での規模変化を見るためのものです。

また、基本情報技術者の通年化など、CBT移行と同時期に別の制度変更が行われた資格もあります。そのため、本記事は「CBTによる因果効果」を推定したものではありません。方式変更を経験した資格で、その前後に受験規模がどう動いたかを比較したものです。


比較に使用した主な数値

資格 2019年・2019年度 2025年・2025年度 2019=100
基本情報技術者 121,556人 147,186人 121.1
DCプランナー2級 2,279人 2,480人 108.8
アクチュアリー第1次 3,714科目 2,860科目 77.0
販売士3級 15,659人 7,861人 50.2
福祉住環境コーディネーター3級 9,525人 4,632人 48.6

日商簿記3級については、2021年度の統一試験142,626人・ネット試験206,149人に対し、2025年度は統一試験52,723人・ネット試験276,477人でした。

2021年度以降はこのほかに団体試験(ペーパー)も実施されているため、統一試験とネット試験の合計を「日商簿記3級全体の受験者数」とはしていません。


主な出典